強引上司にさらわれました
遠く離れる宣告は突然に


「朝倉くん、麻宮くん、ちょっといいかな」


部長に手招きをされて課長と揃って呼ばれたのは、野沢くんとのお昼から帰ってすぐのことだった。
人事部の向かいにあるミーティングルームに入って行く部長のあとを追いかけた。


「まぁ座ってくれ」


部長に促されて、課長と並んで腰を下ろす。
課長とふたりで呼び出されるなんて、いったいどんな用件なんだろう。
ちょっとした緊張に包まれながら背筋を伸ばす。


「麻宮くん、少し前に提出してきたバイパス申告書のことなんだが」

「……あ、はい」


バイパス申告書とは、直属の上司ではなく人事部長に直接、自身の進退について相談できるものだ。
上司に伝えづらいような異動の希望も、直で上層部に申告できる。

私がそれを出したのは、課長の部屋を飛び出した翌日だった。
内容はもちろん、他部署への異動だ。
この先も一緒に仕事をしていくほど、私は精神的にタフではないから。

でも、そのことを今、課長がいるところで話さなくてもいいのに。
課長を抜きにしたかったから、バイパスを使ったというのに。

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