強引上司にさらわれました
キスの雨を降らせて


明日はいよいよ採用試験の最終面接の日だ。
事前に役員とのスケジュールの確認と、履歴書やエントリーシートを元にこちら側で作成した学生の簡単な紹介を再度見直す。


「野沢くん、役員たちへは面接の注意事項を書いた用紙は渡ってるよね?」

「えー? あんなもの役員に必要ですか?」


野沢くんは、椅子にふんぞり返って後頭部に両手を当てた。


「役員だからこそ必要なの」


ほかの人には聞こえないように口元に手を当てて囁く。

面接は、企業が学生を見極めるだけでなく、学生もまた企業を観察する場なのだ。
身だしなみはもちろんのこと、携帯やスマホの電源は落としておくこと。
あくびなども厳禁。

上から目線になりがちな役員だからこそ、そういった基本的なことができない人が稀にいる。
事実、一昨年の最終面接では、携帯に応答した役員がひとりいて、それが原因で学生が辞退してしまったということがあった。

学生が真剣勝負する場は、企業も真剣に受けて立たなければならない。


「そうなんですかぁ?」

「よろしくね」

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