妻に、母に、そして家族になる

小さなお客さん

数日後。

暑さが厳しい八月初旬。

まだお客さんが少ない十一時半過ぎ。

いつものようにレジにいると、店のドアが小さく開かれる。

そこから顔を出したのは小学校一年生ぐらいの小さな男の子。

あれ、この子……。公園にいた子じゃない?

男の子は遠慮した様子で店に入るとレジにやって来る。

その後ろに両親の姿はない。

一人でここに来たのかな。

「こんにちは」

私から声を掛けると、男の子は怯えたように肩を震わせ、小さく「こんにちは」と言った。

「何が食べたい?」

メニューを渡すと、男の子は戸惑いながら受け取り、黒い瞳をキョロキョロ動かして商品を選び始める。

男の子の目が、こちらを向いていないのをいいことに、私はその子の顔を観察した。

その子の顔はよくひまわりにやってくる、いつも疲れている男性によく似ていた。

アーモンドのような形の目とか、人懐っこそうな感じとか、あの人のミニチュア版みたい。
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