マンションの部屋を後にし、スマホの画面を見ると、もう十一時を回っていた。

だんだん、トレンチコート一枚だけじゃ、肌寒くなってきたな……。

吹き付けてくる風に、身を縮める。

私は、駅へ向かう足を早めた。

時々、マンションの方を振り返ってしまうのは、やっぱり……少し寂しいと思ってしまうから……。

でも、今日は仕方ないよね。いつものような元気がない朱音さんのことが心配だ。




駅の光が視界に入ってきた時、携帯が鳴った。

小野原さんだ。

「はい、もしもし」

『香奈、朱音を見なかったか?』

……見なかったか、って……どういうこと?

小野原さんの声はいつもと変わらず落ち着いているように感じるけど、どことなく焦ってるような感じも受ける。

「どうしたんですか?」

『急にいなくなった』

「えっ!?」

『しばらく何も言わず座ってたんだ。そしたらトイレに行くと言ってリビングを出た。時間がかかってるから、心配になって声を掛けたが返事がなくて……開けたらいなかった』

「そんな……」

どこに行ったの…?

「私、ずっと駅方向に歩いてましたけど、朱音さんには会いませんでした」

『……そうか』

「私も探し……」

『香奈はこのまま帰ってくれ』

私の言葉を遮るように小野原さんが言った。

『もう遅いし、ぎゃくに香奈に何かあったら大変だ。朱音は俺が探すから。もしかしたら、タクシーか何かで帰ったのかもしれないしな』

「……はい……」

『気を付けてな』

「……小野原さんも」

私は携帯を切った。

……探さなくていい、って言われたけど……。

この前も、朱音さん、危なかったし……。

探したいけど、私を思ってくれる小野原さんの気持ちも分かる。

……本当に、この辺にいないかな……?

私は、もう一度、周囲をぐるっと見渡した。