どん底女と救世主。
鬼との同居、順調には行かず。



「あんた、今どこに住んでるの?」


お昼どきで人がごった返している社食の隅で、怒ったようにそう聞くのは同期の絵理。


お昼時間が12時からとは決まっていないウェディングプランナーの彼女が、早めに並んでくれたおかげでスムーズに手に入れられたワンコイン定食の鯖を解体していた私は一瞬言葉に詰まる。


「あ、うん。友達の家にお邪魔させてもらってるの」

「何回LINEしても『大丈夫』としか返してこないから心配した」

「ごめん」


まさか深山課長の家にお世話になってるなんて言えないし、何て言えばいいか分からなくて絵理には詳しい返信をしていなかった。

本気で心配してくれていた絵理には申し訳ないけど、本当のことは言わず嘘をつく。


ちょっと、深山課長との同居は誰にも知られたくないかも。


「もうさ、野田君とは別れたの?」

「うん、この前の日曜日にちゃんと話した」

「そっか…。まあ別れて正解だと思うよ、私は。咲の後輩に手を出すなんて最低だよ。
咲にはさ、絶対良い人見つかるから」

「ありがとう、絵理」


美味しそうに頬張っていたトンカツと箸を置き、真面目にそう言ってくれる絵理。

入社式の後、化粧室で一緒の化粧品を使っていたということがきっかけで仲良くなったわけだけど、こんなに親身になってくれる。本当にありがたい存在だ。

大事にしなきゃな。

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