キミの笑顔が見たいだけ。
プロローグ


「なぁ……頼むよっ。お願いだからーー」



ーーピッ ピッ ピッ ピッ


目を閉じていてもわかる心電図モニターの機械音。


規則正しく酸素を送って呼吸を助けてくれる、人工呼吸器。


もうどれくらい目を開けられずにいるのかな。


ふわふわ宙に浮いた感覚。


まるで、魂が体から離れていくような……不思議な感じがする。


もしかすると、このまま……。



「頼むから……目ぇ、開けろよ。帰ってくるって……言っただろ?」



誰かがギュッと手を握っているけれど。


ごめんね……。


あたしには握り返す余力さえ残されていない。


キミの手は、大きくて、頼りがいがあって、優しくて、温もりに溢れていたね。


不安な時も悲しい時も、キミの温もりに助けられていたんだよ。



「起きろって……なぁっ」



やめてよ。


耳元で、そんなに切なげな声を出さないで。





あたしはーーキミの笑顔が好きだった。


今でも、大好きだから。


キミには幸せになってほしいと思ってるんだ。





だからお願い。


これからもずっと笑顔でいてくれないかな。


ねぇ、笑って?


どうして泣くの……?





キミに泣かれるとツラいからーー


どうか……お願い。













あたしはただーーーー














*キミの笑顔が見たいだけ。*






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