もうひとつの変化は、悪阻がおさまってきたということです。体調が楽になることで、精神的にちょっとばかり落ち着きを取り戻すことができました。たまたま、妊娠初期を問題なく過ごせたというのも大きかったと思います。これがもし、出血や切迫流産の危機などに直面していたら、パニックでも起こしていたのではないでしょうか……(汗)

 さて、自称“冷静になった私”が考えたのは「中の人との関係性について」です。自分、無駄に理屈っぽいんで……(苦笑)この頃にはもうあきらめていたんですよね。「私の可愛い赤ちゃん」みたいな母性的な感覚は自分には訪れまい、と。

 そこで浮かんだイメージが、他ならぬ「ドラクエ」ですよ(は?)。私の頭の中に広がったのは、お花畑ではなく冒険の世界(へ?)。マップですよ、マップ(あ?)。そんでもって、パーティを組むわけですよ(……)。

・夫(戦士)――体を張って金を稼いでパーティを支える(剣は使えるか?)。

・私(魔法使い)――屁理屈という呪文を駆使して難局を乗り切ろうとする危うい奴。

・子(勇者)――重要な役どころではあるが、最初は非力で守られてばかりで戦力にならないという……。

・猫(仲間になりたそうにこちらを見ていた獣)――ザ・癒し系。

 私、本当に冷静だったんですかね……(苦笑)「私はママじゃなくて魔法使いよ。そう、そうよ、そうなのよ!」なーんて、完全にメンタルどうかしちゃった人ですな(汗)

ただ、こういうくっだらねぇ妄想をすることで、けっこう気が楽になったんです。今思うと、自分なりに状況を楽しむ方法を模索していたのでしょうね。

 私、本当に往生際が悪くて。おまけに、臆病で意気地が無くて。「何があってもママがあなたを守るからね(キリッ)」みたいに、カッコよくなれなくて。いつもいつも自分に自信がなくて。

世の中には「私をママにしてくれてありがとう」なんて感謝されている御子もおられるというのに。なんだか中の人にも申し訳なくて……。

 でもですね、「私の赤ちゃん」という呪縛(?)から逃れて自分なりの関係性を考えることで、ちょっと気持ちが変ったのです。私は中の人の「筆頭協力者」である。そう思うと、なぜかその状況を受け入れられたのです。

 縁があって中の人の筆頭協力者となった私は、環境の貸与、栄養の提供、安全の確保などの仕事にあたります。あと、脳内で対話することで(?)ちょっとした情報提供も行います。

この辺りの考えはもう、まるっと『准教授 高野先生のこと』で秋谷真樹に語らせているところですね(笑)。秋谷真紀(秋ちゃん)は、いわゆるできちゃった婚をした妊婦さんという設定なんですけどね。どうしても、ガンガン母性に目覚めてドンドン母親らしくなっていくという書き方ができなくて……(苦笑)。

 さて、それでです。なぜ「私は魔法使いよ!」などという無茶苦茶な妄想をすることで楽になれたのか? ひとつは「母性」というイメージから少し離れることができたから。もうひとつは「自分は中の人にとって一番近い存在ではあるけれど、多くの協力者の中の一人である」という認識だと思います。

 とにかく気負っていたんですよね。「赤ちゃん可愛い。幸せ」という感覚になれない自分に罪悪感がありましたし。そんな自分だからこそ、きちきちちゃんと怠りなくやっていく責務ある、と。

 でも、中の人を「子」というより個人としての「個」と捉えることで、楽になれた気がします。それに、パーティは二人きりじゃありませんしね(笑)

 ほんっと、理屈っぽくて自分でも嫌になっちゃうのですが……(苦笑)そうして、魔法使いは理屈という名の呪文を唱えながら、その後のクエストもどうにかこうにかクリアしていくのでした。