【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜

だけどその瞬間、思いきり強く抱きしめられた。



「……っ、バカ」



かーくんの腕が、声が、震えてる。



「嫌に…決まってんだろ。

俺だって、おまえのそばにいてぇよ…」



「…っ」



「お前のことはずっと、俺が守るって決めたんだ。

なのに、くそっ…」



苦しそうにつぶやくその声に、胸がぎゅっと締め付けられる。


それを聞いて思った。


かーくんだって、悔しい気持ちは同じなんだ。同じように辛いんだ。


ううん。もしかしたら、私よりもっと辛いのかもしれない。



「かーくん…っ。

私だって、離れたくないよ…」



しがみつくようにかーくんの胸に顔をうずめる。



「ごめんな、りぃ」



「謝らないで…」



「ごめん…」



『ごめん』が『サヨナラ』みたいに聞こえる。


どうしてこんなことになっちゃったんだろう。


もうどうしようもないの…?



私たちは、いつだって一緒だったのに。


お互いそれが当たり前だったのに。


明日からは、かーくんが隣にいない毎日が始まるんだ。


そんなの嫌だ。嫌だよ…。



お願いだから嘘だと言って。ねぇ。


かーくんと一緒にいさせてよ……。


.




.


< 227 / 336 >

この作品をシェア

pagetop