俺様副社長のとろ甘な業務命令
53階への呼び出し



CM撮影日から数日が経った。


新商品のプロジェクトも終盤戦に突入し、仕事は順調に進んでいる。

CMの方も制作会社との最終打ち合わせが今日の午後行われ、あとは完成に向けての編集が上がるのを待つのみとなった。


毎日は相変わらずの調子で過ぎているけど、同時に副社長が再び渡米する日も近付いている。

その日はもう、明後日と迫っていた。


知らせを聞いてから、訳もなく落ち着かない気持ちが続いている。

だからと言って何にそうなっているのかもわからず、そしてどうにかできるわけでもなく、ただただ時だけが過ぎ去っている。

明日の終業後には、副社長の送別会が急遽行なわれる予定になっている。


今日も一日の仕事を終えて一人オフィスを後にする。

到着したエレベーターに乗り込んだところで、手にしていたスマホがブルっと震えだした。


「あ……」


画面を目にしてつい声が漏れてしまった。

エレベーター内には他にも乗り合わせている人の姿があり、震え続けるスマホを手にしたまま一階に着くのを待つ。

やっと扉が開き、外に出ると同時に通話をタップした。

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