彼女は心に愛を飼っているらしい
4.休日の海


強い日差しが窓越しに容赦なく照りつける。
外でなくセミの音は暑さを何十倍も感じさせ、額から垂れる汗が僕の集中力を奪っていた。


時期は7月初旬ーー。


クーラーが壊れた、と担任が言ったのは今から3
日前のことだった。

教室の空気はじめっと、生温く不快指数はぐんぐん上がる。そのせいか、この3日間、グループ内での言い合いの声が多く聞こえた。


「何をケンカしてるんだろう……」


クラス替えから3ヶ月が経つと、既にグループ形成が済み、定着する。しかし、形成されたグループは一度、何らかのきっかけを基に変わっていくらしい。

卒業する時に、最初にいたグループと今いたグループが違うというのがよく起こるのは、その原理が働いている。と、何かの専門書で読んだことがある。

グループっていうのは面倒くさい。

そんなものに興味のない僕は、今もひとり、はみ出さないように線の上を歩いていた。


「昨日さ、こんなに大きい虹を見たの。私、感動しちゃった」


ひとり……。
気づけば、横に彼女がいるけれど。


「今日も見られるかもしれないから、一緒に見に行かない?」


「行かない」



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