幾久しく、君を想って。
零れ落ちた涙のワケ
「宮ちゃん、それで?」


電話の向こう側から楽しそうな声が聞こえてくる。
昨日は名前を借りてしまった林田さんに、こっそりと打明け話をしていた。


「だから、さっきも言った通りのことです。
昨日一緒に出掛けたことにしているので、拓海に何か聞かれたら口裏を合わせて欲しいんです」


「ふぅん」


林田さんは呟き、「いいけどぉ」と了解してくれる。
だけど、それだけで済む相手ではないと思う。


「それで?相手の男とはどういうの?」


やっぱり聞いてきた。
絶対にニヤついているだろうな…と思い浮かべながら、どうって…と言いながら答えに迷う。


「普通にいい友人と言うか、まぁそれなりにはモテそうな感じの人だと思うけど」


「何!?それってつまりイケメンだってこと!?」


声のトーンが上がり、身を乗り出している様子が窺える。


「イケメン?……と言えば、言い切れなくもないかな」


はっきり言ってイケメンだな…と、昨日は実感したんだ。
そんな人なのに、どうして自分と会いたがるのかが謎でいけない。


「いいじゃん!イケメンとデート!」


羨ましいなーと零し、ついでにまた「どうだった?」と聞き返す。


「どうって…お互いに失態しましたと言うかですね。ちょっと口で説明するのも難アリな感じで…」


私は相手を怒り飛ばし、彼は私に手を出しかけそうになった。

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