愛しの残念眼鏡王子
いつものようにふわりと笑う彼に、自然と口元が緩んでしまう。


一郎さんとの交際は順調で、まずはお互いのことを知るところから始めた。

一緒に仕事し始めて一年以上経っていたけれど、お互いまだまだ知らないことが多かったから。


知れば知るほど一郎さんのことが好きになっていき、最近ではちょっと困っている。

なんていうか、一郎さんが近くにいてこうやって笑顔を見せられちゃうと、無性に抱き着きたくなっちゃうんだ。


けれどここは会社。
そんなことしていいわけがない。


必死に抱き着きたい衝動を押さえていると、なにやら一郎さんは茶葉が入った筒を持ったまま、首を傾げていた。


「一郎さん、茶葉は三杯ですよ」

そっと助言をすると、彼は苦笑い。


「アハハ……ごめん、もう何度光希に聞いているんだって話だよね」


付き合い始めてからお互い下の名前で呼び合っている。

でも私はいまだに彼に「光希」って呼ばれちゃうと、ドキッとしてしまう。

嬉しくて胸がギュッと締め付けられてしまうんだ。
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