3ヶ月だけのママ~友達が妊娠した17才の夏~
第15話「踏み出された一歩」
 翌朝、私は千奈美にメールを打っていた。
 内容は、産婦人科のススメって感じ。

 内診あるときに着ていくといいファッションとか、あると便利なアイテムとか、そういうこと。

 内診があるときにパンツスタイルで行くと、おしりまるだしの恥ずかしい格好になっちゃったりもするみたい。
 カーテンで仕切られてるから気にならないかもしれないけど、気になるかもしれない。
 千奈美のパンツスタイルはほとんど見たことないけど、それでも教えておいた方がいいよね。

 私も風邪をひいて病院行ったときに、ワンピース着てたせいで恥ずかしい思いをしたことがある。
 聴診器当てるだけなのに下からまくり上げて、パンツ丸出し。
 小学校のころとはいえ、やっぱり恥ずかしかった。

 メールのタイトル部分にあるFw:を消して、メール本文も少しいじる。
 これは私がネットで調べたことじゃない。
 啓子が千奈美に教えてあげてって送ってきたメールを転送しているだけだった。

 アタシからだってのは内緒とも書いてあったから、あたかも私からのアドバイスみたいに送る。

 啓子は千奈美に中絶して欲しいって言った。
 産婦人科に行くときに便利なことは、中絶しに行くときにも便利なことなのかもしれない。
 でも、啓子がそんなつもりで送ってきたんじゃないと思ってる。

 裏も表もなくて、ただの親切心。
 今さらだけどって書いてあったけど、今さらでも教えてあげたかったんだよね。

 私は啓子を信じてる。

 軽蔑していいって言った言葉が、軽蔑して欲しいって言ったように聞こえた。
 そんな自傷行為。

 ケロリと中絶のことをみんなの前で言ってのけたのも、そうだったのかもしれない。
 生乾きの傷に自分で触れて、再び傷を開く。
 決して癒えないように、決して忘れないように。

 啓子と俊輔君の赤ちゃんを、過去のこととして風化させないように……


「送信、っと」


 啓子からのメールを転送すると、すぐにありがとうと顔文字つきの返信がきた。


『行く時は、いつでも付き合うからね』


 少し悩んで、そう返信した。
 それと一緒に、啓子に千奈美がありがとうって言ってたよって送る。

 ギクシャクしてしまった二人の仲を、少しでも取り持ちたかった。

 啓子へのメールを送信すると、千奈美からのメールが届いた。
 すぐに開いて、そのメールの内容にビックリして目を見開く。


『ありがとう、でも大丈夫。今度からは夏樹くんが付き添ってくれるから』


 親に話したから次はお母さんが付き添ってくれるとか、そういう返事ならまだ理解できたかもしれない。
 でも、まさか夏樹の野郎の名前が出てくるだなんて思いもしなかった。

 私はメールじゃなくて、千奈美に電話をかけていた。

 メールを打って送って返信がくるまでのタイムロスが耐えられない!


『もしもし』

「千奈美? 夏樹くんって、いったいどういうこと? 何があったの!?」

『うん、ごめんね。すぐに言わなくて……昨日、電話がかかってきたの夜中だったから』


 それから千奈美は、簡単に昨夜の出来事を話してくれた。
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