千奈美と啓子と私の三人で、久しぶりにお茶をした。
 千奈美は夏樹くんとの約束があるからって途中で帰ってしまったけど、凄く楽しい時間だった。

 前みたいな他愛もない話。
 啓子のパフェを少し味見させてもらったり、お互いの飲み物も交換してみたり。
 そんなごく普通のこと。

 千奈美の妊娠が啓子から打ち明けられて、まだ一ヶ月も経っていない。
 それまでは普通にしていたこういうことが、物凄く久しぶりな気がした。

 でも、私たちと別れた後、夏樹くんと会った千奈美は大変だったみたい。

 夏樹くんと久しぶりに会って話して、今まで言えなかったことを全部ぶちまけたって言っていた。
 ずっと前のこととか、今さらなこととか、そういうことも全部。
 そうじゃなきゃ前に進めない。
 言えなかった気持ちを抱えたままじゃ、重くて動けないって。

 いっぱい傷つけたと思う。
 酷いこともいっぱい言った。
 自分のことも棚に上げて、全部全部ぶちまけた。
 それでも夏樹くんは、怒らなかった。
 全部ちゃんと、受け止めてくれたよ。

 千奈美はそう涙ながらに話してくれた。
 本当によかったと思った。
 千奈美と夏樹の関係は、ようやくスタートラインに立てたんじゃないかって気がした。

 でも、本当に大変だったのはそれからだったみたい。
 週末の夜に、千奈美はその出来事を電話で話してくれた。

 千奈美はお父さんとお母さんに、妊娠していることを打ち明けらいい。
 お母さんは泣いて、お父さんは黙ってしまったそう。

 親にあんな顔をさせて、凄く胸が痛いって千奈美も泣きそうになっていた。

 夏樹くんのことも話して、私が連絡を受けたその日に両家そろって話し合ったみたい。

 千奈美は、その時のことも教えてくれた。
 自分の中でその出来事を整理するみたいに、事細かに。

 初めて会った夏樹くんのご両親。
 もっと違う形で会いたかったな。
 わたしが誘惑したんだろとかって責められるんじゃないか怖かったけど、会った瞬間に頭を下げられちゃった。
 わたしのお母さんも夏樹くんのお母さんも、泣いたり取り乱したりしてたけど、思ったよりはみんな落ち着いてた。
 もっと凄い修羅場を想像してたよ。

 意外にも、冷静な話し合いが進んだらしい。
 お互いがお互いを責める気力ももうなかったのかもしれない。
 千奈美の両親も夏樹くんの両親も、それすらい疲れた顔をしていたって。
 それに、どちらの両親も意見は同じだったから対立しなかった。

 中絶しなさい。

 それが大人たちの、お腹の赤ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃん達が出した答えだった。