旦那様は妖怪様
許嫁
「華夏、迎えに来たよ」

「え…」


むだに長い廊下を駆け抜け、パジャマ姿のまま庭に飛び出す。

「あ、貴方は?」

「嫌だな、華夏が十六になったら結婚するって君のおばあさんが言ってたでしょ?」

月に照らされ瞳を怪しげに紅く光らせたその人はクイッと私の顎を持ち上げ、じっくりと私の顔を見た。

「へぇ…結構カワイイじゃん」

逆光で見えづらい彼の顔を見ようとすると、そんな言葉が紡ぎ出された。
かぁっと全身の血が頬に集まったように顔が暑くなる。
ハハッと楽しそうに笑った彼は私の頭を撫でこう問いた。

「華夏、俺の嫁になって。いや、なれよ」

半ば命令と言えるこの言葉が精一杯のプロポーズだと気づいたのはまだ後のこと。
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