京都チョコレート協奏曲
「どうだろうね? 毒かもしれないよ」
おれが思い掛けない大病で入院することになったのは、3回生の夏だった。
風邪が長引くなあ、と感じていた。
微熱が続いて咳が出る。
だんだん体力が落ちていくのがわかった。
それでもできるだけ普通に過ごそうと、部活にも講義にも出ていた。
結局、部活中に熱中症を併発して倒れて病院に運ばれて、そこで病名がわかった。
肺結核だった。
おれはすぐさま、隔離された病室で入院することになった。
投薬治療で経過を見るという主治医の説明は、ほとんど理解できなかった。
おれはもうすぐ死ぬんじゃないかと、恐怖が目の前でチラチラして、今まで平気だった微熱さえ苦しくてたまらなくなった。
結核菌は飛沫感染する。
おれと多く接触した人たちはみんな病院で検査を受けた。
全員が陰性だったという結果を聞いて、ホッとして涙が出た。
おれの病状が落ち着くまでの2ヶ月くらいは面会謝絶との指示を受けて、寂しくて涙が出た。
入院して最初の1週間、主治医や看護師の目がないときには、涙が止まらなかった。
不甲斐なかったんだ。
試合直前に倒れて、最低でも2ヶ月は入院。
おれといちくんと平《へー》ちゃんの3人がいれば負けなしだと期待されてたのに、おれは何の役にも立てない。