副社長と愛され同居はじめます
「お……お邪魔します」



こんな貧乏くさい格好で、こんな人の隣に座るなんて冗談じゃないというのが正直なところだ。
だけど、有無を言わさないオーラを醸し出されて私は観念して乗り込んだ。



「お仕事だったんですか」

「ああ、午前中に少し社に顔を出してきた」



成瀬さんは、今日も絶対に仕立てが良いだろうダークスーツをびしっと着こなしている。
袖からさり気なく覗くのは、私もよく知ってる高級ブランドの腕時計だ。



やば、さすがにちょっと……恥ずかしい。
と、自分のカットソーの裾をきゅっと握った。


決して、お洒落に興味がないわけではないし、物欲が全くないわけでもない。
いや寧ろ、抑圧しているだけにきっと人並み以上にはある。


本当は、貧乏でももう少しくらい自分の好きな物を買える余裕はあった。
だけど、抑圧してるが故に一度手を出したら爆発してしまいそうで、ずっと自分を戒めている。


いつか金回りのいい男を捕まえて、男に買ってもらうんだと自分を励ましながらやってきた。
そう、好きなブランドに連れてってくれて、なんでも好きなものを買っていいよ、なんて言ってくれる男が居たら私は生涯その男に貞淑を誓うかもしれない。

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