副社長と愛され同居はじめます


「いいんですか?」

「何が」



少し息が整ってから尋ねると、目の前で咽喉仏が動くのと同時に短く尋ね返される。


困ってしまって、ダンマリを決め込む。


だって具体的に「何が」なんていい難いし。
っつか、意味くらいわかってるくせに。


互いにダンマリして、先に折れたのは成瀬さんの方だった。



「……今はいい。小春は勢いに流されてここにいるだけだろうし」

「まあ……否定はしないですが」



金銭的な援助を条件に受け入れたものが「結婚・婚約」である以上、そこは私が覚悟しなければいけないところで拒否する権利はないのだけれど。



「小春の気持ちが手に入るまでは、いらない」



少し擦れた、抑揚のない声だった。



「え……それって、私が好きになるまで、ってことですか」

「全部が欲しいって言っただろ」

「そう、ですけど……」



まさか、気持ちを欲しがってくれるとは思ってもいなかった。



「俺を好きになるまでいくらぐらいかかる?」



結局彼がどこかズレてることには違いないのだけど。

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