そんなことを考えていると携帯が鳴って、画面を確認したわたしは慌てて着信に出る。

『着いたから、出てきて』

由佐さんの声にドキドキしながら、「はい」と返事をして電話を切り、部屋を出た。

マンションの前の道路脇に停まっている黒い車は、以前にも乗ったことがある。由佐さんがわたしの住んでいるマンションを知っているのは、出会った次の日の朝、わたしを送り届けてくれたから。

「こんにちは……すみません、迎えに来ていただいて」

「いいよ。車で移動したかったから」

車のドアを開けて遠慮がちに助手席へと乗り込もうとしたとき、視界に入った由佐さんの私服姿に胸が高鳴る。
ジーンズを履き、カットソーとシャツを着ていて、普段のスーツ姿とは違うカジュアルな格好に、思わず見惚れてしまった。

バーテンダーをしていた由佐さん、会社でスーツを着た課長、そして休日のオフスタイルという新たな彼の姿を見てしまって、しかもかっこいいんだから、わたしの顔はどんどん赤くなっていく。

「どうした? ……もしかして、俺のこといいなって思った?」

「そ、そんなことあるわけないですよ!」

茶化すような彼の言葉にはっとしたわたしは、慌てて車へと乗り込む。本当はいいなって思ったのに、からかうような言い方だったから勢いよく否定をしてしまった。
すると由佐さんは「そうか」と、ふっと笑って顔を逸らしたが、そんな彼の微妙な態度を気にするような余裕はわたしにはなかった。

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