あ~、いい匂いだな~。
 カフェの匂いってやっぱり好きだ。

 朝の混雑が落ち着いて、ようやくゆったり珈琲の香りに浸れる時間帯。

 新米店員……と言ってもバイトな南条(なんじょう)あまりは、テラスに居る客に珈琲を運びながら、その香りにご満悦だった。

 だが、外に出ようとした瞬間、足が止まりそうになる。

 そのテラス席で、書類を見ながら話しているビジネスマンらしき男二人が視界に飛び込んできたからだ。

 そのうちの片方に目を止めたあまりは、そのまま引き返しそうになる。

 ま、まま、まずい……っ!

 何故、此処にっ?

 ところが目の前でテーブルを拭いていたマスターの甥、成田克也(なりた かつや)が顔を上げ、
「あまり、なにやってんだ?
 早く持ってかないと冷めるだろ」
と言い出した。

 そ、そうですよね。
 冷めますよね。

 この美味しい珈琲を美味しいタイミングで出せないなんて悪ですよね、悪。

 店の前を通るたび、素敵なカフェだなーと眺めていた店に、やっと雇ってもらったのだ。

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