あまりさんののっぴきならない事情
「大丈夫か? 姉ちゃん」

 こんな崩れ落ち方する人、漫画以外で初めてみた、と膝から崩れ落ちたあまりに尊が言ってくる。

 再び、その写真を見ながら、遥真が言い出した。

「この写真を見て、結婚を決めたのなら、君が好きなのは、俺、ということにならないかな? 南条あまりん」

 特になにも考えていなさそうに、海里と同じ声で、遥真は言ってくる。

「ねえちゃん……しっかり」
という弟の声がむなしく響いていた。

 あまりは、テーブルの冷たいアイアンの脚をつかんだまま、座り込んでいた。

 ああ、今、服部さんの言ってた犯人とか来たりしないだろうか。

 こんなところに座り込んでいる店員を見て、うわっ、と逃げたりしないだろうか、と冷静に考えていたが。

 それは逆に、全然、冷静じゃなかったからかもしれない。

 あとからそう思った。





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