副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
その後、ぶらぶらと買い物をしたり、お茶をしたりゆったりとした時間を過ごした後、誠は莉乃の家に車を停めた。


「ありがとう。いろいろ」
マンションのエントランスの前でシートベルトを外しながら言った莉乃に誠も微笑んだ。
「俺のほうがお礼を言わないといけないだろ」

「じゃあ、また会社でね」

「莉乃、もし何か変わったことあればすぐ連絡しろよ」
ドアノブに手を掛けた莉乃に、心配をした様子で誠は声を掛けた。
「ありがとう」
お礼を言って車から降りて、ドアをしめて開けられた窓から莉乃は誠を見た。

「誠……」

莉乃は無意識に誠を呼んだことに、自分自身で内心慌てていた。

「どうした?」

優しく答えた誠の声に、涙が溢れそうになる気持ちを押さえて莉乃は笑顔を作った。

「うんん。なんでもない。おやすみ」

莉乃は慌てたように言うと、小走りで自動ドアの中に向かった。

「莉乃……」

そんな誠の呟きは莉乃には聞こえず、莉乃の後ろ姿を誠はただ見送った。
< 100 / 323 >

この作品をシェア

pagetop