「いいえ。だって今回のロケハンは共同戦線ってやつでしょ? 仲良くコラボするふりをして、ライバルのやり方ってやつを盗んでやろうって腹よ」


「へぇ」と頬杖をついて挑戦的に口端を上げると、向居も切り返した。


「なら俺も盗ませてもらおうかな。軍師・逢坂氏のやり方ってやつを」

「私のリサーチスキルは一長一短で盗めるものじゃないのよ」

「ああ、だろうな」


愉快げに笑うと、向居はふと目を細め真剣な表情に戻り、ひとりごちるように続けた。


「―――ま、『欲しい者』は、他にもあるんだけどな」


艶気を潜ませて低く響かせたその言葉は、どこか意味深だった。


「欲しいもの? もちろん、お土産物屋もめぐるつもりだけど」


すると、なにが可笑しかったのか…向居は急に声をたてて笑い出した。
訊いたところで返答できそうもなく笑い続けているので私が言葉に詰まっていると、向居がまだくつくつ笑いながら、おもむろに席を立った。

店を出るなら一言告げなさいね…!
そばに置かれていた紙伝票を探すが…。
…あれ? なくなっている。

それもそのはず。
紙伝票は、すでに向居の手にあった。

もう…! どこまでも抜け目ないやつ…!


「ちょっと待ってよ、向居!」

「早く帰るぞ。陽が高くなってきた。今日は絶好の旅行日和だ」


と、さっさと会計を済ませてしまった向居の後を追って、私は青空が澄み渡る古都へと繰り出した。