空と君との間に
それからというもの、隆志とはよく遊んだ。


放課後、俺の家に寄り、荷物を置いて、街へ繰り出したりしていた。


どんなにくだらない事をしていても、隆志となら楽しく感じた。


ある日、隆志が、ギターを習いたいと言い出し、二人で練習した事があった…


「だー!何でこう、Fコードってのは難しいんだよ!」


「ははっ!みんなそれで躓くんだよ。俺は楽勝だったけどな」


「まじかよ?どんだけ練習したんだよ?」


「うーん…ここまで弾けるようになるまで、一ヶ月みっちりやったぐらいだぞ。そんなに大変じゃないだろ?」


「一ヶ月毎日?」


「あぁ、ほぼ毎日。お陰で、このコード表…日に焼けて、別のページと色が違うし!」


「まじかよー?!お前は引きこもりか!俺にはできん…」


「俺…暗いかな?」


「いや、そんなに努力することは中々できないよ。お前、よっぽどギターが好きなんだな」



俺は嬉しかった…


自分のことを、素直に褒めてくれる奴に出会えて…



そして、こんなエピソードもあった…


俺達がいつもの様に、遊び回っていた時…


一度だけ、他校の生徒に絡まれた事がある。


その時俺は、応戦しようといきり立っていたが、隆志はそれを止め、俺の手を引っ張って逃げた。


「何で、逃げんだよ?!」


「いいから、黙って来い!」


そして、逃げ切った所で、隆志は俺にこう言った。


「お前、その拳であいつら殴ったらどうなる?」


「俺は、負ける気はしないよ!」


「そうじゃねぇだろ?少なくとも、その手を痛めたら、ギター弾けなくなるじゃねぇか!」


「………」


俺は、何も言えなかった…


隆志が言ったことに、呆れていたからではない。


嬉しかったのだ…


俺は正直、自分がくだらない喧嘩で、拳を痛めたら、ギターを弾くけなくなることなど、考えてもいなかった。


その隆志の気持ちが、思いやりが、嬉しかった。


俺は、初めて親友と呼べる奴に出会った…


そう思った。


それから俺達は、お互いの事を、何でも話せる仲になっていった…
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