怪道
完結

登場人物 


コト   4歳  好奇心旺盛だけど怖がり

ミツ   18歳   コトの母  町民




そこは妖怪の街

誰一人人間が居ない


そこへ行く道はとても長くとても暗い。


人は暗闇を怖がり近づかない。


でももし近づいたら?




コト「おっかさん、あれはなぁに?」


ミツ「あれはガランチョウ(現白鳥)だよ」


コト「あれは?   あれは?」


ミツ「ふふっ   コトは知りたがりだねぇ」


コトとミツは遠く離れたミツの両親の家に向かうため道中散策しながら歩いていた。


山の中だがミツの両親の家までは歩きやすく、4時間程の距離だ。


子供の足では辛い。

でもコトは楽しそうに歩いていた。


ミツ「ちょいとここで休んでいこうか」

コト「うん!」

ミツ「川があるから水を汲んでこようか、コトはここで休んどきなさい」

コト「わかった!おっかさん」


ミツが少し先にある川へ行き、竹の筒で川の水を筒の中に流した。


ふとミツはコトの事が心配になり振り返り、コトの姿を確認した。


ミツ「ふふっ、だいぶ疲れたのか素直に座ってるよ、いつもは動くなと言っても聞かないのにね」


ミツは川の水を汲み終わるとコトの所へ向かった。


ミツ「コトや、水を汲んできたげたよ。さぁお飲み」

コト「おっかさんありがとう」


コトは母から竹の筒を受け取ると勢いよく飲み干した。


コト「おっかさん、これじゃあ飲み足りないよ」

ミツ「そうかい、ではもう一回汲んでこようか」


そういうとミツはまた、川へ歩いていった。


コト「おっかさん!まーだー?   ゥヒ」

ミツ「今行くよー!」


ミツはコトの為に水を汲み、走ろうとしたが疲れているのかトボトボ歩くので精一杯だった。


コト「ありがとう、おっがさん」

ミツ「これくらい、いいんだよ。さぁ、歩こうか」


そう言うとミツはコトの手をとり歩きだした。


ミツ「コトや、おっかさんが水を汲んでるとき何をして暇潰してたんだい?」


ミツはコトに尋ねました。

コトは少し間をあけてこう言いました。


コト「なにもしてないよ?喉が乾いてたからずっと座ってたんだ」


ミツ「そうかい」


二人はトボトボと歩きました。

ミツは休憩前に比べると元気がないなぁ?疲れたのかな?と思いミツがコトに喋りかけるようにしました。


ミツ「ミツは疲れたかい?」

コト「そうでもないよ」


コトがそう言うとすぐさまコトが質問してきた。


コト「おっかさんはわらべうたを知ってるかい?」

ミツ「わらべうたってあのわらべ歌かい?そりゃ知ってるさ」


そう言うとミツは歌いだした。


「とぉーりゃんせー、とぉーりゃんせー、こーこはどーこの細道じゃー、天神様の細道じゃー」


と歌っているとコトが言った。


コト「そのわらべうた、実は歌詞が間違ってるんだよ」


ミツ「そうなの?」


コト「実はね「天神さま」じゃなくて「妖怪様」なんだよ」


ミツ「そ、そうなのかい。」


コト「おっかさん♪妖怪様で歌って♪」


ミツ「わかったよ」


とぉーりゃんせー、とぉーりゃんせー、こーこはどーこの細道じゃー、妖怪様の細道じゃー、

ちっと通してくだしゃんせ、御用のないもの通しゃせぬ

この子の七つのお祝いにお札を納めに参ります。

行きはよいよい帰りは怖い

こーわいながらも通りゃんせ、通りゃんせー・・・


歌い終わるとふと回りが暗くなった。


ミツ「コト?コトはどこじゃ?」


コト「おっかさん」


コトは今にも泣きそうな声でおっかさんを呼んだ。


ミツが振り返るとそこには今にも泣きそうなコトと、そのコトの隣で笑っているコトがいた。


ミツ「一体これは、コト、どっちがコトなんだい?」


ミツが言うと笑っていたコトが歪んでいった。


ミツ「どういうコトなんだい?」


歪んだコトがだんだんと形を無くし、そして違うものに変化していった。


ミツははっとして「コト!」と大声で叫んだ。


でももう遅かった。


今にも泣き出しそうだったコトがだんだんと小さくなり、小さなお札に変化していった。


ミツが叫ぼうとした瞬間、辺りがパッと明るくなり、ミツは一瞬、目を閉じてしまった。


次にミツが目を開けたとき、そこには川があった。


そう、コトと休憩したあの川だ。

コトが休んでいた その場所には着物と草履だけが残されていた。


ミツは必死になってコトを探したが見つからなかった。


膝をついて悲しさが込み上げてきた。

と共にコトが言っていた言葉を思い出した。


天神さまは、本当は妖怪様だと言うことを。。。




おしまい。


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