ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
4: 想いの欠片


それから暫く経って、あんなにうるさかったセミの声がいつの間にかなくなっていた。ジリジリと照りつけていた太陽は落ち着きを取り戻して、今日から新学期がはじまる。

「おはようー!」「久しぶり」

そんな声が飛び交う中で、衣替えをした制服がなんだか窮屈で教室に向かう足が重たい。

学校の空気、学校の匂い。やっぱり私は好きじゃない。


「おはよう、羽柴」

教室のドアの前で躊躇していると、後ろから声をかけられた。それに押されるように私が教室に足を踏み入れると詩月はニコリと笑う。

少しだけ日焼けした肌。詩月が席に着くとまたすぐにクラスメイトたちが集まって輪を作った。

9月1日、2学期。そんなふわふわと浮かれている教室で私は静かに自分の席に座る。

「夏休み中いっぱいメールしたのに無視したでしょー?」

「はは、ごめん。色々と忙しくてさ」

また詩月のカメレオン生活。私は「はあ……」と
ため息をついて、ぼんやりと窓の外を眺めた。
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