「翔ちゃん、大好き」

我が家の隣に住んでいた本木(もとき)家の長女・葉月(はづき)は僕が物心付いた時から、そう言って抱きついていた。


僕より二つ年上の隣のお姉ちゃん。
僕は「はーちゃん、はーちゃん」といつも彼女の後を追いかけていた。
くるくると動く瞳が可愛くてどんぐりみたいにまん丸い。
その右目には小さな泣きボクロがあった。
顔は小さくて髪の毛は少しクルッと丸まってて栗色をしていた。


葉月には聡(さとし)という弟がいて僕と2日違いで生まれた。
聡は葉月とは対照的な顔立ちだった。
葉月をタヌキと例えたなら、聡はキツネ。
切れ長の目に鼻筋がスッと通っている。


僕、野村翔太(のむらしょうた)の顔立ちはどちらかというとタヌキ顔。
二重の目は少し垂れていて、顔もまん丸だった。
三人でいると葉月と僕が兄弟に間違えられた。
それは僕にとって少し不満。
だって葉月は僕のお嫁さんになるんだから、兄弟なんてまっぴらだった。