その日は寒い朝だった。
街はクリスマスソングが流れ始め、カレンダーはあと一枚となっていた。
期末試験も終わり、試験休みのため、朝寝坊ができる。
そう思ってもいつも通り目が覚める。しかも寝不足だった。


高校生になって初めてのクリスマスだったけれど、今年も聡と葉月と一緒にいつものように過ごすと当たり前に思っていた。まだ眠い目を閉じたまま、布団の中で二人へのプレゼントをあれこれと考える。


「聡はニット帽が欲しいって言ってたな。聡がお気に入りのスポーツブランドを選びに行こう。はーちゃんには…」


最近は聡も僕も「はーちゃん」と本人を呼ばなくなった。
「葉月」と呼び捨てにしていたからだ。
「はーちゃん」なんて恥ずかしくて呼べない。

その葉月との昨日のことを思い出し身体が熱くなる。
高校三年生で大学受験を控えている葉月には、最近はなかなか会えずにいた。


僕は期末試験も終わった開放感で、試験中は我慢していたマンガを買いに行ったコンビニから帰って来ると、その葉月が僕の家の前に立っていた。

もう夜の九時を回っているのに制服のままだ。
コートは着ていない。
受験生の葉月は今日、学校にでも行っていたのだろうか?


「葉月?」


僕が帰って来たことに気がつかないのか、突っ立ったままの葉月を呼ぶ。
いつもそばにいた彼女を見間違えることなんてないはずなのに後ろ姿は違う人のように感じる。
儚くて、消え入りそうな背中が僕をどことなく不安にさせる。


すぐに葉月の表情を確かめたくて、着ていた黒のダウンジャケットを脱ぎながら小走りで葉月に近寄り後ろから彼女を包むようにジャケットをかけた。振り返った葉月は数日逢ってないだけで、ひどく疲れているような気がした。