過保護な副社長はナイショの恋人
思いがけないキスです
『ずっときみが、気になっていた』

副社長の言葉が、頭を何度もリフレインする。席へ戻り、雅也先輩と店を出たあとも、ボーッとしてしまっていた。

「咲実ちゃん、どうかした? なんか心ここにあらずって感じだけど」

タクシー乗り場へ向かう途中、先輩に声をかけられハッとする。

「すみません。ちょっと酔っちゃったかも……」

笑って誤魔化すと、先輩が心配そうな視線を向けた。

「じゃあ、早く帰ってゆっくりした方がいいな。ひとりで大丈夫?」

「はい、大丈夫です。先輩、今夜はありがとうございました」

「いや、また誘うよ」

先輩に会釈をして、タクシーに乗ると、自宅へ帰った。中心部から、車で十分ほどの低層マンションが建ち並ぶ住宅地に一人暮らしをしている。

マンションへ帰ってからも、副社長とのやり取りが、頭を駆け巡っていた。

私が気になっていたって、本気で言っているの? 今夜、蓮見社長と真依子さんと会っていたのは、どんな理由からなんだろう。

心に引っかかりを感じながらも、ときめく自分もいる。そんな自分を制する自分もいて、頭が混乱していた。

副社長の言葉を、信じていいの? それとも、からかわれただけ……?
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