カノジョの彼の、冷めたキス


「うちの会社、渡瀬さんにいつもお世話になってるんですよ。今日はちょっと相談させてもらいたいことがあって。アポなしだからダメだったかな」

男の人が困っているあたしに笑顔を向けてくる。


「あの、失礼ですけどお名前は?」

「あ、ごめんごめん。こういうものです」

同じ年かちょっと上くらいに見えるけど、彼の話し方はあたしに対して少し上から目線だった。

手渡された名刺に書かれているのはあまり聞きなれない会社名と彼の名前。

その肩書きが社長になっていたから、驚いて視線をあげた。

もしかしたらこの人の会社は、渡瀬くんの特に大事な営業先かもしれない。

肩書きを見て、あたしに対する物言いがちょっと偉そうだったことにもうなずけた。


「し、少々お待ちください」

名刺を持って一旦下り、部長のところに相談に行く。




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