カノジョの彼の、冷めたキス
出張同行
「え、出張?」
お礼のキスから1週間が過ぎた頃。
あたしのデスクのそばまでやってきた渡瀬くんが、偶然空いていた隣の原田先輩の椅子にどかっと腰をおろした。
「そう。来週末、大阪で展示会があるのは知ってるよな。そこで、うちの会社も小さいけど出展ブースをもらえてる。その手伝いに、俺も行くことになった」
「へぇ。いってらっしゃい。お土産、よろしくお願いします」
軽く頭をさげて、やりかけの仕事に取りかかろうとパソコンに向き直ったら、渡瀬くんが突然あたしの左肩をつかんだ。
「いや、いってらっしゃいじゃねぇよ」
「じゃぁ、何?」
力強く肩をつかむ手にドキリとしながら振り向いたら、呆れ顔の渡瀬くんと目が合った。
「何、じゃなくて。その出張にお前も一緒に行くことに決まったから」
「え、あたしも?」