カノジョの彼の、冷めたキス

ホテルでの一夜



「へぇ。斉木さんは大阪初めてなんや?」

「はい。中学のときの修学旅行で京都には来たことあるんですけど……」


大阪でのイベントは滞りなく終わり、あたしと渡瀬くんは大阪支社の社員たちの誘いでイベント打ち上げに来ていた。

打ち上げでやって来た居酒屋で隣に座ったのは、大阪支社の高下さんでふたつ年上の先輩だった。

初対面だけど人あたりのいい人で、イベントのときから何かと話しかけてくる。


「明日土曜やけど、すぐ東京戻るん?大阪観光せぇへんの?」

「そうですね。できればしたいなーって思いはありますけど……」

社交辞令的に笑いながら、自分がとった新幹線の時間を思い出す。

観光のことなんて全く頭になかったし、長居しても仕方ないと思ってたから午前中のチケットを予約した。

どうせなら午後のチケットにして、何か大阪名物でも食べて帰るくらいの余裕を持たせればよかったかもしれない。

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