過保護な騎士団長の絶対愛
ユリウスの運命
 コルビス王国は温暖な気候にあるため、春が長い。城の庭園にはポピー、マグノリア、チューリップなど春を代表する花々が咲き乱れ、庭師が毎日精を出している。ララの部屋は南向きにあるため、朗らかな日差しが差し込んで、昼間だというのについうとうとまどろみに誘われそうになる。それなのに……。

「ララ様、こちらの計算式、すべて間違っているようですが」

 そんな陽気とは裏腹に、その淡白な声音でせっかくの穏やかな気分が事切れる。ガクッとうなだれて、ララが顔を上げると、きゅっと唇を結んだユリウスが無表情のまま見下ろしている。

「また先日と同じミスです。復習をしませんでしたね?」

「計算苦手で……」

「これくらいのこと、計算のうちに入りません。いいですか? 同じミスは二度までです。三度目はなんというかご存知ですか?」

「え?」

「世間では“馬鹿”と称されます」

「うぅ、ば、馬鹿……」


 ユリウスは時に意地の悪いことを言う。ララはなにも言い返せずに唇をへの字に曲げた。
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