御曹司を探してみたら
5.御曹司サマの正体

「ったく!!余計な手間かけさせやがって!!」

ホテルを出るとまもなく、人目をはばからない武久の怒声が辺りに響き渡った。

「ごめん……」

私は小さくなってひたすら反省の意を表明するしかなかった。

「俺が来るのが遅かったら、どうなってたと思ってんだ?世の中真っ当な男ばかりじゃないんだからな!?」

武久が怒るのはごもっともで、今回ばかりはぐうの音も出ない。

もし武久がいなかったら今頃どうなっていたかわからない。

……遊ばれる寸でのところだった。

襲われかけたのだって、御曹司だって肩書だけでホイホイついていった罰が当たったんだ。

「ふ……っ……」

私はとうとう泣き出してしまった。

本気で怒る武久が怖かったわけじゃない。夢がぶち壊されたことが悔しかったわけじゃない。

ただ素敵な恋がしたくて必死でやってきただけだったのに、他人からは単なる遊び相手にしか見られていないという事実がひたすら悲しかった。

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