独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
1章、


従業員出入り口からビルの1階商業フロアへと出て、人で賑わっている通路を進んでいく。

仕事を終えこの道を通る時、店先へと目を向け、足を止めたりする時もあるけれど、とてもじゃないが今日はそんな気分になどなれなかった。

ため息がこぼれ落ちていく。心に余裕がない。

気分が重い理由は私の手の中にある。

スマホの画面には、母親からの着信を知らせる文字と回数が表示されている。その数13件。

まだ来ないのか。いつくるのか。今どこにいるのか。遅い。早く来い。何をしている。

おそらくそんなことを思って、彼女は私に電話をかけてきたのだろう。

スマホを操作して、昨日の朝、母から送られてきたメールを開いた。


“明日、仕事が終わったら、家に来なさい。話したいことがあります”


話したいこと。それが何なのか知りたくて、メールを確認したあとすぐ、私は母に電話を入れた。

しかし、母はそのことについて何も言ってはくれなかった。来たら話すと、その一点張りだったのだ。

だから今から、私は実家に行かなくてはいけない。

家族とは疎遠になりつつあり、家に帰るのも四年ぶりである。帰るのも勇気がいる。


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