最後の恋 【番外編: 礼央目線】
その日は、実家に呼ばれ杏奈とは会えないと思っていた。


「だから、見合いはしませんよ。以前もお伝えしたように、結婚相手は自分で見つけますから。」

「だけど、いつまで経ってもお前は彼女の一人も家に連れてこないじゃないか。」


そんな事を言う父に、言ってやった。


何度断っても諦めず見合い話を勝手に進めようとする父を止めるためにはもう言うしかなかった。


「…実は今、結婚を考えている人がいます。結婚は彼女以外考えられません。」


父の顔は、やはり驚いていた。そして


「だったら、一度家に連れてこい。俺が見極めてやる。」


そうなるのは分かっていたから、本当はまだ言いたくなかった。


彼女なら、問題なく父のお眼鏡にもかなう事は分かっている。


だけど、まだ付き合い始めて3ヶ月足らずの彼女にいきなり『父に会ってくれ』なんてプレッシャー以外の何物でもないと思った。
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