翌日、お昼に後輩の真美ちゃんと社食に行こうと席を立つと高橋が「昼メシなら俺も一緒に行く」と声をかけてきた。
「わあっ、高橋さんとご一緒できるなんて嬉しいですぅ」
真美ちゃんは甘い声を出した。

せっかくだから社食じゃなくて3人で外に昼食に行く事にした。
高橋にコーヒーを奢る約束もしていたし、何より真美ちゃんが高橋と一緒に昼食に行くことを喜んでいたから。

真美ちゃんは今週から始まった新しいプロジェクトも頑張ってくれているから、たまには後輩にご褒美をあげよう。
真美ちゃんの『高橋さぁん』と『さ』と『ん』の間に入る小さな『あ』の発音が甘ったるくて少々鬱陶しいけど。

「真美ちゃん、残念だけど高橋に夢を抱かない方がいいわよ。高橋は王子様じゃなくてただのオレ様系男子だから」
にっこり笑顔と穏やかな口調で真美ちゃんに警告した。

「ひどいな、谷口。お前だって人のこと言えないだろうが」
高橋が反論する。

「あら、私が何よ?」

「ちょっと見は、いかにも儚げな美人なのに中身は超姉御で意地っ張り。口は悪いしその上泣き上戸」

「はぁ?」
私の眉間にしわが寄った。
高橋のネクタイに手をかけギリギリと締め上げたい衝動に駆られる。

「あ、それわかりますぅ」
真美ちゃんが脳天気な声を出したせいで力が抜ける。
「早希さんって見た目と中身のギャップがたまりませんよね。私のツボですもん」

後輩にツボって言われても・・・。
高橋は肩を震わせて笑っている。
やっぱりこいつ一発殴ってやろうか。



3人で魚フライが美味しいと評判だけど、お洒落とはほど遠い定食屋でランチを済ませ会社に戻ってきた。
雰囲気より何よりも味が大事。私のお気に入りのお店。

わが社の1階にはカフェがある。
今日は高橋に昨夜のお礼のコーヒーをご馳走しないといけない。

真美ちゃんと話をしながら隣を歩いていた高橋のスーツの袖をちょっと引っ張って
「コーヒーをテイクアウトしていくから真美ちゃんと先に戻っていて」
と伝えた。
高橋がうなずくのを見て真美ちゃんに声をかける。

「真美ちゃん、コーヒー奢るわ。何がいい?」

「わぁい。キャラメルラテでお願いします」

「OK、じゃ上のレストコーナーにいて」

私は2人から離れてカフェに入った。