クールな外科医のイジワルな溺愛
夢が覚めるまで


「うう……」

昨夜は黎さんのとんでもない発言のせいで、全然眠れなかった。明け方に少しまどろんだような気がするけど、すぐにアラームに起こされた。だるい体を引きずるようにリビングへ歩いていく。

あんなことがあって、どんな顔をして黎さんと会えばいいんだろう……。おそるおそるドアを開けると、そこには誰もいなかった。黎さんはまだ寝ているのかな。それにしても物音ひとつしない。

とにかく、コーヒーでもいただこう。このままじゃ、仕事中に爆睡しちゃいそう。

ふらふらとキッチンへ立ち入ろうとしたとき……。

「あれ」

ダイニングテーブルの上に、メモ用紙があるのを発見。そこには達筆な字でメッセージが書かれていた。

【緊急で呼び出された。行ってくる】

摘み上げたそれには、そんなことが書かれていた。私が知らない間に、出かけていたの? もしや、ちょっとだけまどろんだ明け方に呼び出されたのかな。

【今日は夕方から当直の予定。
申し訳ないけど、夕食は適当に支度して。しっかり食べなさい】

えーと、明け方病院に行って……どんなことで呼び出されたのか知らないけど、一旦仕事のキリがついたら、きっと病院でシャワーを浴びて仮眠を取るんだよね。

お父さんが亡くなったのも、深夜だった。いよいよ危なくなってきたときに看護師さんがそのときの内科の担当医を呼びだした。担当医は病院にいなくて、わざわざ自宅から来てくれたんだった。


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