ついに、夜会の日がやってくる。
その日、ローゼは朝早くから、屋敷脇でディルクと花選別をしていた。いつもクレムラート家に花を納入する花商人には王家に花を贈りたい旨を伝えてあり、多めに持ってきてもらっている。
まずはクレムラート家で、王家に失礼のないように選別してから、夜会に向け午後から出発する当主夫妻よりも先に届けてもらうという寸法だ。


「いやあ、ローゼちゃんが侍女にまで出世していたとは」


ニヤニヤ顔で寄ってくるのは、ローゼを就職の口を世話した花商人だ。


「今だけよ、おじさん。それより、お花を確認させて?」

「王家に贈るのでしたな。どれでも好きなものを選んでください。ローゼちゃんの名前にちなんで薔薇なんかでもいいんじゃないかな」

「いや、薔薇は会場である東の宮の庭園の自慢の花だ。逆に失礼になるから、薔薇以外を頼もうか」


親し気に話すふたりの間に、口を挟んだのはディルクだ。
花商人はすっと背筋を伸ばして、にこやかにディルクに対応する。


「では百合でしょうかね。大ぶりで気品がある。百合は種類も多いですよ。王家に贈るとなれば白の百合……マドンナリリーあたりかカサブランカかあたりですかね」

「そうだな。……どう思う? ローゼ」

「ええ。それはそれでいいと思いますが。折角ですので、あちらの薔薇と合わせたら目を惹くような小花や葉を贈るのもいいのではないでしょうか」

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