ディルクは、エーリヒに連れられて一階の客間の一室にいた。扉を閉めていても、広間からの演奏や人々のざわめきが感じられる距離の部屋だ。


「なぜあの娘がここにいる?」


エーリヒは腕を組み、苛立ちを含む口調でディルクを責め立てる。


「なぜといわれましても。エーリヒ様、彼女はローゼと言って、家柄的には特筆することのない娘です。現在はクレムラート家に仕えておりまして、エミーリア様のお気に入りですのでこうして一緒に連れてきただけです」

「農家の出身なんじゃないのか? この場に出てこれるような身の上じゃないだろう?」

「どうしてそれを……」


ディルクが眉を顰めると、エーリヒは口元を押さえて視線を泳がせた。


「そんなことはどうでもいい。とにかく、あの娘をこんな場に出すのはまずい。君だって、自分の父親が死んだときのことを知らない訳じゃないだろう?」

「あなたの義理の母親……子爵家のパウラ夫人とともにいたというのでしょう?」

「そうだ。そのパウラとそっくりだ! 父に見つかったら大変なことになる」

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