愛すべき、藤井。



「あー、でも。楽しかったぁ〜!」

「んな!俺もまさかこの歳になって、こんな楽しめるとは思ってなかった」

「やっぱり私たちのレベルは最高だね、藤井」

「おう、やっぱ俺ら最高に」


「「アホだな」」


顔を見合わせて見事にハモった私たちは、そのまま吹き出してゲラゲラ笑う。


あー、これだよ。
やっぱり私と藤井はこれだよ、これ。


一緒にいると楽しくて、ワクワクして、笑ってばっかりで、藤井と遊びに行った次の日には腹筋が痛くなるって言う災難にも見舞われるけど、


それがまた、いい味出してたりして。


もう気づけば夕暮れで、海に沈んでいくピンク色の夕日が水面を照らしている。


ゆらゆらと揺れる水面は、キラキラ光ってすごく綺麗。きっと藤井はロマンに欠けるからなーんにも感じてないんだろうな。


その証拠に、


「夏乃、帰ろーぜ」



「風邪ひく」と続けた藤井は、Tシャツの裾を絞りながら私に背を向け歩き出した。それに小さく「うん」と答えた私もまた、藤井の真似してワンピースの裾を軽く絞りながら歩き始める。


「ね、藤井」

「ん?」


本当はやっぱり、どうしようもなく藤井が好きです。日々大きくなるこの気持ちに、どうしていいか分かりません。


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