この一言が言えたなら
意地悪
彼女は彼の彼女になることはできなかった。



彼女は泣いた。そして後悔した。





もっと早く思いを伝えていれば。

自分の口で彼に思いを伝えていれば。

あの日も最後まで練習を見ていれば。

もっと彼の近くで彼の輝く笑顔をこの目に焼き付けておけば。

彼の話がちゃんと耳に入ってきていれば。








私の耳がたくさんの輝く音を聞くことが出来れば。


未来は変わっていたかもしれない。
彼女は彼の彼女になれていたかもしれない。

「好き」

の一言が言えていえばもっとたくさんの彼の輝く笑顔を見ていられたかもしれない。

彼の話がちゃんと彼女の耳に入ってくる日が来たかもしれない。

無音の世界から抜け出せたかもしれない。

しかしそれは叶わなかった。




神様は彼女から、音を奪った。

そして、彼も奪っていった。



神様は、ほんとに意地悪ね。
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