わたしが小説を書くように
夢が叶うとき
「うーん……」

 わたしは、鏡の前でああでもないこうでもないと、服を体に当て、悩んでいた。

 せっかく奮発して買ったワンピースが、なんだかイメージしていたのと違う。

 こうしてみると、自分に似合う服など一着もないのではないか、そんな気さえする。

「これで、いいかな……」

 結局、何度か袖を通している、着心地のいいワンピースにすることにした。

 これなら、緊張する場面でも、多少はリラックスできるはず。

 明日は、早起きしてヘアサロンに行って、髪をセットしてもらって、それから、それから……。

 胸が急に、バクバクいい始めた。


 失敗が許されない一日。

 夢に見続けた一日。


 明日は、小説家松島恵の、文学賞受賞式の日だ。
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