わたしが小説を書くように
抱かれるということ
 二時限目が終わると、わたしは教室から出て、ゆっくりと廊下を歩く。

 反対側からちょうど先生が出てくる。こちらも少し、ゆったりとした足取り。

 先生がわたしに気づく。

 薄い笑みが、先生の口元に広がる。

 わたしも、わずかに頬をゆるめる。

 すれ違う瞬間、視線が激しく絡み合う。

 お互いの頭が、少しだけ動く。

(今日は大丈夫?)

(もちろん)

 どちらからともなく、無言の会話がなされる。

 そのまま、振り返ることなく、先生は去っていく。

 
 共犯者のよろこびを、ふたりは味わう。

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