由良先輩はふしだら
《side 広真》


……美子に、キスされた。


月明かりに照らされた美子の顔は、なんだか今まで見た彼女とは違って見えて。


考えたら、告白してきたのは美子からだったけど、触れるのはいつも俺の都合で、美子はいつだって受け身だった。


彼女から俺を求めてきたことなんて、そういえば、なかった。


初めて美子から、俺に触れてきて……。


なんか……ずけぇ、びっくりした。


美子も、あんな顔するんだって……。


「はよ、広真」


「……っ、あぁ、はよ」


朝、教室の机に身体を預けながら、先週のことを思い出していると、後ろから馴染みの声がしたのでそう返す。


「あれ、なんか広真……顔赤くね?」


っ?!


「……っはっ、別に」


宙が俺の顔を覗こうとするので、慌てて窓に顔を向けて顔を隠す。


なんだこれ……すっげぇ調子狂ってんじゃん。


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