HARUKA~愛~
第4章 高3の秋 文化祭
夏休みが終わり、残暑が厳しい9月。


窓から差し込む日差しに目を細める。

私の席からは何でも見渡せる。


遥奏が眠たそうにしている姿が目に飛び込んで来た。

遥奏は、私よりも宙太くんよりも勉強を頑張っていた。

毎日放課後には図書室の1番隅の席を陣取って、難しい理系科目を黙々と進めている。

遥奏は文系の方が実は得意らしいけど、小学校教諭になるのに文理はあまり関係ないからという理由で、宙太くんと同じ理系コースを選んだらしい。


しかし、遥奏にはいつ見てもうっとりさせられてしまう。

サラサラのちょっと茶色がかった髪の毛が風に靡いて踊る様子は比べ物がないくらい美しい。


「晴香ちゃん!!」

「うわっ…!」
 
「うわっ、じゃないよ!話聞いてたの?」


急に目の前に現れた瑠衣ちゃんに驚いて腰が引けた。

私は瑠衣ちゃんに謝って話の内容を教えてもらった。

どうやら文化祭の役割分担で私と同じやつがやりたいらしい。

私は黒板に連ねられた文字を見つめた。

大道具、小道具、メイド、ウエイター、キッチンと書かれている。

私はこの時初めてクラスの出し物が、メイドカフェだということに気づいた。

そう言えば、一昨日の帰り道で、遥奏と宙太くんが話していたような気がする。

確かバスケ部では演劇をやると言っていた。
演目は完全オリジナルの学園ラブコメで遥奏が主演だったと思う。

宙太くんがいつものごとくいいとこ取りされて、「チクショー!!」とお笑い芸人張りに吠えていたのは鮮明に覚えている。


私が2人のやり取りに思考を巡らせていると、瑠衣ちゃんが机をドンと叩いた。

他の生徒の視線が一気に私達に注がれた。


「はるちん、あたしの話全然聞いてないでしょう!?さっきから遥奏くんのことばっかり見て…!!」

「ごめんね。私、何でも良いの。特別やりたいのもないし…」


私がそう言うと、瑠衣ちゃんは溜め息を1つついて呆れた顔で私を直視した。


「何になっても恨まないでね」


それだけ言って彼女は去っていった。


私はこの時彼女に何も言わなかったことを後悔することになる。
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