君が好きなんだ。
いつのまにか、好き
「須田のことまだ好きなの?」

学生時代の友人に誘われはいった居酒屋、座った席の後ろから自分と同じ名前が出たことに驚き、思わず聞き耳をたててしまった。
聞こえてきた声は、オフィスでオレの隣の席に座る同期のもので、1年前告白してもらったのに断ってしまった女。
そして、今。オレの好きな女。

もう名前だけだった当時の彼女を理由に付き合えないと断ってしまった時の、あの泣き笑い、笑い泣きの顔が忘れられない。何度も「ありがとう」と言っていた顔が、あれからオレの心を離さなかった。

仕事中、部長にからかわれて頬を膨らませていたり、後輩に凛とした態度で教えていたり、同期として、しか見ていなかったはずなのに、いつのまにか目が離せなくなっていた。いつのまにか好きになっていた。

背後から聞こえてくる会話は、とてもシラフじゃ聞いていられないほど照れくさくて嬉しくて、オレは目の前のジョッキをイッキにあけ、友人を驚かせていた。


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