結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「社長って、本性はなんというか……悪い男だったんですねぇ」

「素を知ってるやつからはよく言われる」


遠慮せず思ったことを口にすると、社長はあっさりと認めた。どうやら自覚はあるらしい。


「でも、決して騙したわけじゃない。俺が言ったことは、全部本心だから」


口の端を引きつらせていたものの、そんな言葉が聞こえてきて、私は真顔になる。

全部本心? もしその通りだとするなら……

『今日の姿も素敵です』とか、

『いい女だな、お前は』というのも、本心!?

半信半疑で社長にジロリと目を向けると、彼も私と視線を合わせ、普段よりも甘く、危険な色香が漂う笑みを浮かべる。


「つまり。気に入ったよ、お前のこと」


──ドキン、と不覚にも胸を高鳴らせてしまった。

本当にこれが嘘じゃないのか、私には判断も分析もできない。

けれど、彼の本音であったらいいな、と心の片隅で願っていることは確かだ。

それに、ビジネスシーンでは絶対に見せない姿を拝めている今が、なんだかとても尊く感じる。貴重な有機化合物を発見したような感動すら覚える。

つまり、私も魅せられてしまっていると言えるんじゃないだろうか。

プライベートでは豹変する、危ういこの男に。




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