ケーキ屋の彼

ーー私の好きな人は、ここで働いている。


「いらっしゃいませ」


小さくお洒落なレンガで出来た建物は、豊かな緑と花に囲まれていて、まるでそこはおとぎ話に出てくる空間のように、日常を忘れさせてくれる。


そして、建物の中に入ると、漂う甘い香りに、目に入るカラフルなケーキたち。


「今日は何に致しますか?」


響き渡る甘い声は、柑菜(かんな)の心を奪う。


「じゃあ、タルトオシトロン1つください」


「はい」


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