ルーファスは庭園に面した回廊を走り抜け、天井の高い大広間へと辿り着いた。
右壁面には無数の扉が並び、暗闇の奥深くへ先が見えないほどに延々と続いている。

道の先で、羽飾りのついた仮面が床に落ちているのを見つけて、ルーファスの胸にふっと怒りがよぎった。
間違いない、セシルのものだ。おそらくここで、誘拐されたのだろう。

出会った瞬間に殺さず攫うなどというまどろっこしい真似をしたからには、まだ生きていると考えていいだろう。
どこかに監禁し、なにかに利用しようと企んでいる、あるいは、ときを待ってから殺すつもりなのかもしれない。

すでに城を出て逃げ去ったか、あるいは、まだこの宮廷のどこかに隠れているか。

首謀者が本当にダンテ侯爵ならば、主人がこの宮廷の舞踏会に参加している限りは、その部下たちもこの場を離れないはず。

奴等が一番身を潜めやすい場所はどこか。侯爵の使いとはいえ、この宮廷の中で身動きの取れる場所は限られている。
そう考えていくと、来客が自由に出入りできるこの場所――客間のどこかに隠れているとしか考えられなかった。

しかし、他になんの手がかりもないのも事実。
ひと部屋ひと部屋確認していこうかとも考えたが、鍵をかけて黙り込まれてしまえば、それが一般客なのか奴等なのか判断がつかない。

ルシウスの話によれば、逃げ去った方角的にこの奥にいることは間違いないだろう。
ルーファスは、セシルに繋がる手がかりを追って、注意深く辺りを観察しながら奥へと足を進める。

疑わしいのは広間の最奥、通路を曲がった先の細い廊下に一段と暗くなった一角がある。
しかし、それでも候補は十数部屋以上ある。そもそも、本当にこの場所にいるのかも、定かではない。

ほんのわずかでもいい、セシルの痕跡が残っていないかと、ルーファスは神経を研ぎ澄ませた。

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